このプログラムは MS2109 キャプチャデバイスから取り込まれる 96kHzモノラル信号を、本来の 48kHzのステレオ信号にリアルタムに変換するプログラムです。
ある音声入力インターフェース(マイクやキャプチャデバイスなど)の入力をこのプログラムが受け取って変換し、別の音声出力インターフェース(ライン出力など)に再出力する仕組みで実現しています。
「このプログラムをインストールすると自動的にモノラル音声がステレオになる」というものではないので、変換されたステレオ音声をキャプチャするためには Black Hole
などの他のツールと組み合わせて使用する必要があります。
モノラル音声をステレオに変換して QuickTime Playerでキャプチャしたい場合は、 Black Hole
という仮想サウンドデバイスを使う必要があります。
Black Hole は音声入力と音声出力を持った仮想のサウンドデバイスとして機能するソフトで、macOSや他のプログラムから見ると Black Holeという名前の音声入出力インターフェースが増えたように見えます。
詳しくはこちらこをご覧ください。 https://github.com/ExistentialAudio/BlackHole
Black Holeの大きな特徴は、以下のようにBlack Hole の出力デバイスに音声を出力すると、その音声が Black Hole の入力デバイスから取り込めるという点にあります。
BlackHole(Out) <== アプリからの音声出力
↓
BlackHole(In) ==> アプリへの音声入力
この動きを利用すると以下のようにしてステレオ音声を QuickTimeなどでキャプチャできるようになります。
MS2109Device(In) ==> mono2stereo
↓ ステレオに変換
BlackHole(Out) <== 音声出力先として BlackHole(Out)を選択
↓
BlackHole(In) ==> QuickTimeの音声入力としてBlackHole(In)を選択
この mono2stereo および BlackHoleは Homebrewを使用してインストールすることができますので、まず最初に Homebrewのインストールをしてください。 すでに Homebreの環境ができている方は飛ばして構いません。
上記ページに掲載されているコマンドを macOSのターミナル上で実行することでインストールします。
Homebrewが自動でインストールする Command Line Toolsではうまくビルドできないため、Xcodeをインストールする必要があります。Xcodeをインストールしたら、ターミナルで以下のコマンドを実行してみてください(すでにインストール済みの方も念の為実行してください)。
> xcode-select -p
実行した結果 /Library/Developer/CommandLineTools
が表示された場合、以下のコマンドを実行して、developer directoryの場所を変更する必要があります。
> sudo xcode-select -s /Applications/Xcode.app/Contents/Developer
※ この例は、Xcodeを /Applications/Xcode.app
にインストールしていることを前提としています。そうでない場合はパスを調整してください。
このプログラム(mono2stereo)を Homebrew を使ってインストールします。Homebrewの公式リポジトリではなく、私の個人リポジトリ(tap)からインストールするため、以下のようにコマンドを実行してください。
> brew install kunichiko/tap/mono2stereo
インストールするためにはソースコードからのコンパイルが必要になりますので、Xcodeのインストールなどが必要になります。以下の組み合わせで動作を確認しています。
- macOS 11.6.4 (Big Sur) + Xcode 12.5.1
- macOS 12.2.1 (Monterey) + Xcode 13.2.1
- macOS 13.2.1 (Ventura) + Xcode 14.2
うまくインストールできたら、 mono2stereo
というコマンドが使えるようになっているはずです。ターミナルから実行して以下のような出力が出てきたらOKです。
> mono2stereo
Input Device : 49
Output Device: 85
I: 97792.0, 0.0 : Avg:104.1355kHz, E:0
O: 64512.0, 0.0 : Avg:47.9934kHz, E:0
D: 8448.0
I: 196096.0, 0.0 : Avg:99.8913kHz, E:0
O: 195584.0, 0.0 : Avg:47.9993kHz, E:0
D: 8448.0
プログラムは Control + C
で停止できます。
なお、MS2109デバイスが見つからない場合は以下のようなメッセージが出ることがあります。
No MS2109 device was found. Please specify audio device id with -i option.
To find MS2109 device manually, please use -l option that lists all audio devices on your Mac.
MS2109デバイスの名前が FY HD Audio
ではない場合などは自動検出に失敗してしまうので、後述の方法で手動でデバイスを指定してください。
次に、Homebrew を使ってBlackHoleをインストールします。2ch版、16ch版などいくつか種類がありますが、今回はステレオ音声が扱えれば良いので、 blackhole-2ch
を選択します。
> brew install blackhole-2ch
bin
フォルダに入っている実行バイナリ mono2stereo
に -l
オプションをつけて実行すると、あなたの Macに存在するサウンドデバイスとそのIDの一覧が表示されます。
> mono2stereo -l
Found device:50 hasout=X "USB MICROPHONE", uid=AppleUSBAudioEngine:MICE MICROPHONE:USB MICROPHONE:201308:1
Found device:54 hasout=O "EX-LD4K271D", uid=25E4211B-0000-0000-1C1D-0103803C2278
Found device:69 hasout=O "BlackHole 2ch", uid=BlackHole2ch_UID
Found device:76 hasout=O "Mac mini's speaker", uid=BuiltInSpeakerDevice
Found device:82 hasout=X "FY HD Audio", uid=AppleUSBAudioEngine:MACROSILICON:FY HD Video:1114000:3
Found device:85 hasout=O "EpocCam Microphone", uid=VirtualMicInputOutput:01
この結果から以下のことが読み取れます。
- 入力
- FY HD Audio (MS2109 device) のIDは
82
である
- FY HD Audio (MS2109 device) のIDは
- 出力
- BlackHole 2ch のIDは
69
である
- BlackHole 2ch のIDは
入出力デバイスのIDは -i
と -o
オプションを使って以下のように指定します。
> mono2stereo -i 82 -o 69
IDでなく、以下のように名前で指定することも可能です。IDは再起動したりすると変わるので、名前で指定する方が便利かもしれません。
> mono2stereo -i "FY HD Audio" -o "BlackHole 2ch"
ファイル
->新規ムービー収録
メニューを開きます- 録画ボタンの右に出ている三角形のメニューをクリックします
- カメラとして
FY HD Video
(MS2109のデバイス名) を選択します - マイクとして
BlackHole 2ch
を選択します - 録画を開始します
-h オプションを渡すと、以下のようにすべてのオプションをリストアップすることができます。
> mono2stereo -h
USAGE: mono2stereo [--list-audio-units] [--debug] [--input-device <input-device>] [--output-device <output-device>] [--invert-lr] [--volume <volume>]
OPTIONS:
-l, --list-audio-units Show the list of AudioUnits.
-d, --debug Enable debug log.
-i, --input-device <input-device>
AudioUnit ID or name for input.
-o, --output-device <output-device>
AudioUnit ID or name for output.
-I, --invert-lr Invert L/R signal.
-V, --volume <volume> Volume adjust(+6 db 〜 -40 db). "p6" means +6 db, "m6"
means -6 db.
-h, --help Show help information.
左右のチャンネルを入れ替えたい場合は -I オプションを指定してください。
-V オプションを使うと、以下のように出力されるボリュームを調整することができます。
# -20 db
> mono2stereo -V m20
# -3 db
> mono2stereo -V p3
入出力デバイスを指定する際、以下のようにあいまいな名前で指定することができます。
> mono2stereo -o "BlackHole 2ch"
> mono2stereo -o black
> mono2stereo -o hole
入力デバイスのクロックと出力デバイスのクロックは完璧には同期していません。以下の値は私の環境で計測した数値です。
I: 2781381689.0, 0.0 : Avg:95.9975kHz, E:0
O: 2781477888.0, 0.0 : Avg:48.0005kHz, E:0
D: 1792.0
入力デバイスは MS2109 でサンプリングレートの理論値は 96kHzですが, 実測値は 95.9975kHz でした. 同様に、出力デバイスのサンプリングレートの理論値は 48kHzですが、実測値は 48.0005kHz でした.
これは、ほんのわずかですが入力速度よりも出力速度の方が早い (95.9975 は 48.0005 * 2 より小さい) ということを意味しており、 バッファーアンダーラン を引き起こします。そのため、長時間このプログラムを動かし続けるとプチノイズが発生する事になります。
この計測値は私の環境に依存しているため、皆さんの環境ではまた違った実測値が得られるはずです。もし逆に入力速度より出力速度の方が遅い場合、今度は バッファーオーバーラン を引き起こします。この状況だと、出力音声が徐々に遅れていく事になり、バッファが足りなくなるとやがてプチノイズを生成します.
ひとまず、1〜2時間ほど動かす分には問題はないと考えておりますが、長時間録画を継続したい場合などはご注意ください。
なお、この問題はダミーデータを挿入したり余計がデータを間引く対応を入れる事で対処できるため、将来のバージョンで対応したいと考えています。